面倒な嫌がらせ
探偵業を続けていると、結構な割合で「嫌がらせ」という類の依頼に当たります。
やられる方からすると精神的なダメージが大きいものです。
そして、やる方は完全な悪意から。
しかし解決するには予算が取りにくい案件でもあります。
今回は、過去に実際にあった「嫌がらせ」の案件についてお話してみたいと思います。
嫌がらせの犯人を捕まえたい
もう15年ぐらい前になるでしょうか。
ゴミを捨てられる系の嫌がらせ相談を受けました。
そこの奥さんが朝起きると、玄関に大量の下着が捨ててあるのだそうです。
しかも、とにかく大量。
毎回警察に通報するわけですが、
警察が数えたところによると100以上あるのだそうで。
ペースは数ヶ月に一度で、頻度は不明。
なぜ捨てていくのか、理由も不明だし、
うらまれる理由に心当たりもありません。
奥さんもご主人も首をかしげるばかり。
具体的な調査方法
「相手を見つけてどうしたいか?」
を確認して調査方法を説明していきます。
最終目的というのは調査において大事な事で、
どんな証拠をつかむのか?を決める上で欠かせません。
嫌がらせの場合の依頼目的は
1.犯人を捕まえて警察に突き出す、刑事事件にしたい
2.犯人を捕まえてまずは理由や経緯を問いただし、損害分は弁償させる
3.両方
の3パターン。
でも、依頼者に確認すると、ご主人は「まずは理由を聞きたい。」とおっしゃいます。
そりゃマイホームにそんな事されたら薄気味悪いですよね。
奥様は「警察に突き出してほしい」と。
ということで、「3.両方」で調査開始。
調査方法は定点カメラを設置し録画のうえ、近隣で張り込み。
ただし、日にちがハッキリしないわけで、
まずはカメラの準備に取り掛かりつつ、
日程を調整しましょう、とその日は帰りました。
現れた犯人
翌日、「やられました、すぐ来てください」という
奥さんからの一報で現場に駆け付けると、所轄の警察と奥さんがいます。
玄関には女性用の下着の山・山・山・・・
警察の方で一旦は預かるとの事で持って帰っていきましたが
見てみると全部使用済み
(えーーー!)
どう見ても洗濯して持ってきたようなものじゃありません
当日からカレンダーをよく考えてみると、
とある法則に気が付きました。
犯人の休日を想定すると、一定間隔の曜日がハマったのです。
次の張り込み
ご家族と相談の上、次に来るであろう日に車両を待機させ、
待つことにしました。
・ 隠蔽したカメラで撮影しっぱなしが1台
・ 相手から絶対わからない距離で望遠カメラを1台
を設置し、さらに、車内に2名が隠れ、
交代で望遠カメラと双眼鏡で通行人をチェックします。
後輩 「これ、絶対近所ですよね」
私「いや、それはわからないよ。性別も男性か女性か」
後輩 「近所のうらみかをかったオバサンとかじゃないですか?」
私「だとしたら、捨てても映像残るから誰かわかるね」
と、犯人が現れた時の動きを後輩と打ち合わせしつつ待ちます。
犯行は深夜なので、人通りが減る時間を聞くと1時~5時とのこと。
年寄が多い地域なので、5時以降は犬の散歩があるだろうからそれまでだろうと。
4時間を集中して観察しました。
初日は犯人は現れることなく終了。
二日目の明け方にそいつはやってきました。
現れた嫌がらせ犯人を追跡
車が近づいてきます。
後輩が大きな声を出しかけて、慌てて声を押し殺し
後輩 「 来ました!出た!出た! 」
「 車おりました、捨てました!」
私 「 録画OKよ、運転席用意よろしく!」
後輩 「 エンジン準備OKです 」
私 「 よし、GO、行こう。営業車だね、こっち来るわ。頭さげてかわそう 」
と、こっちに近づいてくる犯人の車から身を隠した後、尾行を開始します。
一旦尾行を開始すれば楽なもので、すぐ自宅はわかりました。
長距離でもなく、割と近所でした。
怪しまれずに犯人は自宅へ入ります。
自宅に入る瞬間の様子を撮影し、表札を確認。
この段階で、知人の可能性を考、明け方すぐに連絡をしました。
報告と突然の調査の終了
旦那さんは仕事に出ておらず、
奥さんが対応してくれるとの事で自宅へ伺います。
「どこの人でしたか?男性ですか?」
と質問が来たので、自宅と表札名、撮影したビデオ映像を見せると
奥さんの顔色が変わり、指が急に震えだしました。
「少し待っていてください」
と、奥さんは外に飛び出して、放置された下着を集めて戻ってきました。
「ご存じでしたか?警察にすぐに連絡をしますか?」
と尋ねると、主人には絶対に内緒にしてほしい、という前提で話をしだしました。
犯人は5年間ほどW不倫関係にあった同じ職場の男性で、
家庭を考え少し前に別れたそうです。
そして、奥さんから頼まれたのが
「この事は黙っていてほしい。今日もなかった事にしてほしい」
そして、
「相手の男性のところに行くので、同行してほしい」
でした。
横についているだけなら問題はなく、
奥さん自身が話をするそうなので付き添いました。
相手に対して証拠が取れている事、
これ以上トラブルになると警察沙汰になりかねない事、
証人(探偵)がいる事
等を話し、
「刑事事件として大きくはならないだろうけども、社会的信用を失うには十分だ」
という話をすると、犯人はすっかり首を垂れあきらめたようでした。
その後、ご主人とどういう話をしたのかわかりませんが、
中身がまったくない調査をもう一度行った後、犯人が現れなくなった。
という終わり方になりました。
大人しそうな奥さんだったので衝撃でしたが、
そうなると使用済みの女性下着はどうやって・・・と思い出すと、
いまだに気になる部分ではありました
札幌で探偵へのご依頼をご検討中の方はぜひ